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東京モーターショーと会場計画
2006.11.30


こんにちは、吉澤です。
皆さんは、『会場計画』ってご存知ですか?
150万人の来場者を迎える『東京モーターショー』の会場は、地元で!すぐお隣にある千葉マリンスタジアムの実に5個分!
この広い会場内を皆さんが迷わずに目的の場所へ行けるように案内サインを配置したり、困ったときに質問できるインフォメーションや、ひと休みする休憩所を会場全体の来場者の動きに合わせて配置したりするお仕事のことなんです。
今回はそんな『会場計画』のエキスパートとして、長年お手伝いしていただいている、拓殖大学工学部工業デザイン学科の寺澤勉教授にお話を伺ってきました。

始めまして、寺澤です
私が初めて『東京モーターショー』と関わったのは学生時代。まだ『東京モーターショー』ではなく、『全日本自動車ショウ』という名称だった1962年の第9回ショーのときに、学生アルバイトとして参加しました。もう40年以上もお付き合いしているんですね。私の奥さんよりも長い付き合いですよ

寺澤教授

東京モーターショー』の『会場計画』とは実際に何をするのか?というと、クルマそのものと、クルマにまつわる技術やクルマのある生活、クルマ社会やそれによってもたらされる文化などのコンテンツ(内容)を展示する「出品者」、これを見に会場に来られる「皆さん」、この双方に満足してもらえる橋渡し役だとおもっていただいてよいと思います。

とはいえ、150万人以上の方に満足していただけるような会場計画を行うのは、なかなか大変なこと。
会場に来る人は、クルマを見るだけでなく、疲れたら一休みしたいだろうし、お腹がへればご飯も食べるでしょう、それにトイレにも行く。
東京モーターショー』に来場していただいた3時間なり4時間を快適に過ごしていただくにはどうしたらよいか。いろいろなことを想定して『会場計画』を行っています

休憩ゾーン

特に思い出深いのは、会場がまだ晴海だった時代ですね。
晴海は素晴らしい会場ではあったのですが、1つネックがありまして、直接会場まで行ける公共の交通手段が都バスしかない。あとはタクシーか銀座方面から歩いて来るしかないんです

歩いてきた人とタクシーできた人は『北ゲート』から、バスできた人は『南ゲート』から入場し、その比率は約7:3。来場者のほとんどが歩きだったので、『北ゲート』がある晴海通りの人の列は、それはものすごいものでしたよ。道路は都バスとタクシー、一般車で大渋滞がふつうでした。

ゲート前の行列

そんな会場のなかで、どうやったら人の流れがスムーズにいくだろうかという、『会場計画』の基本問題に取り組んだわけです。

このときは”人間の習性”を利用して『会場計画』を行いました
一般的なのは『先導効果』というもので、前の人が動いている方向についていくというもの。ということは一番前の人が向かう方向が分かれば、人の流れが作れるわけです。

さて、そのためにはどうすればよいか
これは一例ですが、皆さんが映画館に入ったときに、どんな行動を取るかを思い出してみてください。
真ん中の通路から左側に行く人、多くないですか? 人間の行動について勉強したところ、人間はほうっておくと左側に向かう習性があることが分かりました。
その理由は諸説あって、なかでもわかりやすい説は心臓を守るためというもの。
入り口があって、左に曲がると壁が左側にきますね。心臓により近い場所に壁があると攻撃されにくいので安心する。そのため無意識のうちに左に曲がることを選択するそうです。
こうした人間心理や群集行動の特性を生かすと、よりよい環境づくりが可能になるんです

晴海会場でもこうした考え方を会場計画に取り入れることで、たくさんの来場者がスムーズな流れとなって移動していただけました。そうした状況を実現できたのは嬉しかったですね

幕張に会場が移って17年、皆さんに満足してもらえる『東京モーターショー』とするために、私たちは開催の期間中ずっと、来場者の様子をウオッチングしたり、展示ブースを見て歩く来場者の様子をストップウオッチやカウンターをもって調べたり、さまざまな”生(なま)”情報を取り入れて『会場計画』に生かしています。

寺澤教授、興味深いお話をありがとうございました
次回は『会場計画』に欠かせない『展示デザイン』についてお話を伺います。

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モデレータ紹介
東京モーターショー事務局の吉澤です!10月の第40回東京モーターショー開幕に向け、事務局も準備にフル回転! ブログではフラメンコのような“熱い”情報をお届けしていきます。お楽しみに!
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