第44回 東京モーターショー 2015

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【特集-5】モビリティの多様化

カテゴリー:特集

2015.10.22

【特集-5】モビリティの多様化

従来、クルマは、より遠くへ、より早く、より安全・快適に移動できることを目的に進化してきたが、ライフスタイルの多様化や、都市化※1・環境問題などの社会情勢によって、そのあり方にも変化が求められている。

クルマの使い方に焦点をあてると、所有に拘らず、カーシェアを選ぶ人もいる。欧州や北米で進むスマートの「Car2Go」、BMWのシェアリング・サービス「DriveNow」、フランス・パリで進むEVシェアの「Autolib'」、ライドシェアの「Uber」や「Lyft」など様々なサービスが生まれている。

日本でも、カーシェアが浸透しつつある。時間貸駐車場を運営するタイムズ24が始めたカーシェア「タイムズカープラス」では、2015年7月に会員数が50万人に達した。事前に会員登録すれば、北海道から沖縄まで幅広い地域でサービスを受けられる。スマホやパソコンで空いているクルマを検索して予約しておけば、クルマにカードをかざすだけで良い。全国でレンタルカー・サービスを展開するオリックス自動車も、カーシェアを展開している。利用しない月の基本料金が無料のプランや学生向けなど、幅広いプランから選べる。首都圏を中心に細やかにステーションを展開するカレコ、日産GT-Rやポルシェやオープンカーなどを借りられるアースカーなど、それぞれに特徴がある。

利用の仕方だけではなく、クルマそのものの多様化も進みつつある。世界中の都市部で、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)といった無公害車や、プラグインハイブリッド車(PHV)のような低公害車を優遇するプログラムが実施されている。元々は都市部にクルマで入ることを制限したり、渋滞税を課金することにより、渋滞緩和や排気ガスを減らすことが目的だが、EV、PHV、FCVなどの次世代車を優遇することにより、それらの普及を後押しすることにもつながる。

例えば、2003年からスタートしたロンドンの渋滞税※2だが、ハイブリッド車やEVなどのエコカーは免除されている。フィレンツェではクルマの都市中心部への乗り入れを制限しているが、EVに対しては寛容である。アメリカの環境施策をけん引することで知られるカリフォルニア州の高速道路には2~3人乗りのクルマだけが通れる優先レーンが設けられている。ここでは、PHV、EV、FCVといったエコカーなら、ドライバー一人だけの乗車でも通行可能だ。一方では、そもそも少人数での移動に最適なクルマという観点から、新しいカテゴリーの乗りものも登場しており、日本でも都市交通の円滑化に向けて、「超小型モビリティ」の公道での実証試験が各地で進められている。

これからは、使い方やエネルギーの多様化に対応すべく、クルマやサービスにもより自由な発想が求められる時代になるだろう。 SMCでは、「ステーションコア」にてマルチモーダル紹介と超小型モビリティの試乗、「パーソナルモビリティ研究所」にて歩行者とともに移動する新しいモビリティ=パーソナルモビリティの紹介と試乗、そして「クルマとICT&E研究所」にてクルマとエネルギーの新しい関わりを紹介している。ぜひ、この機会にモビリティの多様化を実際にその目で見て、体験していただきたい。


※1国連によれば、2030年には世界人口の60%以上が都市に集中すると予測される
※2ロンドンで慢性化していた渋滞の緩和策として、2003年に導入されたコンジェスチョン・チャージ(「渋滞税」の意)は、渋滞緩和と公共交通利用促進の目的で導入された。規定された時間帯にロンドン中心部のゾーンに車両を乗り入れると、課金される仕組みで5ポンドから始まって、現在は10ポンドまで値上がりしている。事前に乗り入れ費用を払わない場合は罰金が上乗せされる。